ドイツが東西に分かれていた時代にB&S社が製造しカワイブランドで販売したバストロンボーンです。MADE IN GDR(ドイツ民主共和国=東ドイツ)の刻印がありますので1990年以前の製品と思います。現在のB&S社の楽器に比べて、ドイツの伝統的なトロンボーンの性格を色濃く残しています。ドイツの伝統的バストロンボーンにときどき見られた細管シャンクの規格で、実測12.9/13.8㎜のデュアルボアのスライドを経て直径約250mmのフルサイズのバストロンボーンベルへと開きます。この大きなボア比のためか柔らかい響きでデュアルボア特有の吹きやすさを感じます。

B&Sブランドの純正製品でほぼ同一スペックの楽器を見たことがあるので、設計はほぼ完全にB&Sのオリジナルだと思います。東ドイツでは伝統的にテーパーのやや異なった細管シャンクが使われることが多かったのですが、本器のレシーバーはBachなどの通常の細管シャンクと同一の規格のようです。日本向けの仕様かもしれません。

ベルはゴールドブラスの1枚取りで、溶接にイエローブラスを使用しているため色で継ぎ目がわかります。継ぎ目の部分にわずかに変色が見られます。スライドの外管はニッケルシルバーで軽量、内管ストッキング部先端にわずかにメッキの損傷が見られます。それほど使用していない楽器ですが、おそらくメッキがもともと薄かったのではないかと思います。西側の楽器と違い、硬質クロムメッキではないのかもしれません。円滑性、気密性は実用的に十分だと思いますが、当然ながら日本製の楽器ほどの円滑性はありません。ラッカーは、手の当たる部分も含め、ほぼ完全に残存しています。独特の形状のF管には、一見すると抜き差し管が2か所あるように見えますが、実は片方はダミーで、抜けません。(抜けたとしても主管の支柱にぶつかります。)昔のB&Sのユーフォニアムの4番管と形状が似ているので、もしかすると部品を共通にしてコストダウンしたのかもしれません。

音は全体にゴールドブラスらしい腰のある響きを持ち、ニッケルシルバースライド特有の艶も載っています。中高域では、細いボアが効いてややテナー的な芯のある響きをしていますが、音域が下がるにつれて大ベルの効果で重厚さを増し、低音域では本格的バスの響きに近づきます。テナーとバスの中間のキャラクターの楽器として面白い使い方もできると思います(私見です)。同モデルの初期ロット製品にくらべて中高域が芯のある音になり、品質が向上しているようです。バストロンボーンとしては軽量な印象なので、初心者にも向くと思います。

B&S製の古い細管バストロンボーンマウスピース6/3を1本お付けします。この楽器の付属品ではなく別に入手したもので、古い東ドイツ特有の、テーパー角のゆるい細管シャンクだったため、この楽器に合うように削りました。リム等に傷や打痕はありますが、使用は可能な状態です。内径約27mm、深いV型カップでスロート径は7mm前後ですので、本格的なバストロンボーン仕様です。

ドイツ製らしき汎用のバストロンボーン用ケースが付属します。F管部分の形状が異なるため完全には入りませんが、運搬中にガタつくようなことはありません。

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