

〇ブロムシュテット&デトロイト マーラー 第9番 2026年 ライヴ
URC-0786/7 (CD-R2枚組)
マーラー
交響曲第9番ニ長調
デトロイト交響楽団
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
2026年5月10日 オーケストラホール、デトロイト ライヴ
初出音源。
ブロムシュテットが40年振りにデトロイトと共演した時の貴重盤。
ブロムシュテット98歳という年齢も意識させる、極めて内省的なマーラー第9番。最大の特徴は、全体に流れる遅いテンポと深い静寂である。
第1楽章から音楽を急がせず、旋律や和声を一音一音確かめるように進めるため、細かな声部の動きが克明に浮かび上がる。デトロイト響も厚く鳴らすより透明度を重視し、木管の細かな受け渡しや弦の響きを丁寧に描き出す。
第2楽章では舞曲性が明瞭になるものの、諧謔やグロテスクさを誇張せず、どこか懐旧的な趣を漂わせる。第3楽章では一転して運動性が増し、複雑な対位法を明快に整理するブロムシュテットの手腕が光る。激しい場面でも若い指揮者のように音楽を煽ることはない。
そして圧巻は終楽章である。マーラーの「死」を劇的に描くのではなく、音楽そのものが少しずつ現世から離れていくような表現となっている。弦の旋律も感傷的に歌い上げず、一音一音を慈しむように進み、最後には音が消えるというより、静寂の中へ溶け込んでいく。ブロムシュテット自身の人生と作品の「別れ」が重なって聴こえるのも、この演奏ならではの印象である。激情よりも受容、諦念、そして静かな感謝を感じさせる、晩年のブロムシュテットだからこそ生まれたマーラー。
※オリジナルによるノイズ・音飛びなどお聴き苦しい部分がある場合がございます