本作の幕開けは、当時の"J・BOY" ON THE ROADツアーからの様子からが書されており、この一冊から抜粋をしてみる。
『オレたちって、悲しんだり、怒ったりしながらでも生きている。生まれてきて、生きている事っていうのは、それだけで幸せな事なんだと思ったりする……
帯広のコンサートの夜、彼(浜田省吾)は一睡もできなかった。ホテルで、朝までまんじりともしなかった。
帯広のコンサートの客席に、高校生らしい男の子の遺影を持った二人の男女がいた。コンサート終了後、楽屋を訪れた二人連れは、自分の息子が、彼のテープをエンドレスにしてかけっ放しにしたまま自殺した事を告げた。
息子が楽しみにしていた浜田さんのコンサートを見せてあげたくて夫婦で来ました…と話してくれた。
自分の音楽を聴きながら自殺した、ということが辛かった。それこそ“悩みを抱いたまま踊らせる”のが自分の音楽だと思っていた。
もし、自分の音楽の中に、人を死に追いやるような何かがあるとしたら、自分の音楽が、自分で許せないような気がしたのだった。そう思っているうちに朝になった…。』
まさに浜省のこの時の辛さが分かる反面、一人のアーティストして、一人の人間としても、個人的には強烈に彼の人柄や人間味が胸に突き刺さり、その心情が伝わってくる文面である。
彼のプロデビュー不遇の時代や、浜田省吾と言う一人の少年が80年代にロックアーティストとして成功するまでの長い道のりとそのサクセスストーリーを、まるで青春映画の様に書されており、省吾ファンには必読な作品である事は間違いないだろう…
省吾さんのインタビューでの言葉がいくつか載っており、そこだけでも魅力的な人柄が存分に伝わってくる。この記録が読めて本当に有り難い。