ライナーノーツ:ステファヌ・オリヴィエ(2002年8月、パリ)
ベノワ・デルベックの音楽について、オリヴィエはモンテーニュの「私は存在を描かない。私は移ろいを描く」という言葉を引きながら、その本質を「運動」に見ている。デルベックの演奏では、複数の出来事が同時に進み、重なり、流れ、エネルギーや強度が絶えず姿を変える。そこで目指されるのは、固定された形を示すことではなく、音が生まれる瞬間の微細な動きや、物質の内部に潜む脈動を、できるだけ損なわずに聴こえるものとすることである。
・デルベックの音楽は、作曲と即興を単純に対立させるものではない。
あらかじめ固定された作品を忠実に再現するという西洋音楽の伝統とも、即興を演奏者の内面や感情の直接的な告白とみなす考えとも距離を置いている。
・そこで重要なのは「自己表現」よりも、音や物質の流れを受け止めること。
演奏者は自分自身を語るのではなく、絶えず変化する音の運動が通過するための器、あるいは共鳴体となる。
・一方で、そのためには身体が不可欠である。
デルベックはジャズの重要な教えとして、身体を通さなければ音楽は成立しないと考える。ただし、その身体は自然な感情をそのまま放出するものではなく、訓練され、変形され、組み替えられた「プリペアド」な身体である。
・彼の「作曲」は、新しい形式を完成品として提示するというより、音楽が立ち現れるための一時的な仕掛けを作ることに近い。
そうした仕掛けは、音楽が生まれた瞬間に役割を終え、消えていく。最終的に残るのは、過ぎ去る時間そのものが響きとなった感覚である。
本作はピアノおよびプリペアド・ピアノによるソロ作品集で、録音面でも空間性が重視されている。第1〜8曲は6チャンネルDSD録音を基礎とし、天井反射を利用した高さ方向の音響情報も収録。第9曲ではさらにコンピューター処理と電子的操作が加えられている。
※以上は、ステファヌ・オリヴィエによるライナーノーツを出品者が読み、内容のポイントを独自に要約したものです。