1. 平井康三郎(明治43年~平成14年):「荒城の月」の主題による8つの変奏曲(昭和32年)
2. 伊澤修二(嘉永4年~大正6年)/L.W.メーソン(1818-1896):へとつ(明治16年頃)
3. 信時潔(明治20年~昭和40年):小学唱歌「月」の主題による10の変奏曲(大正9~11年頃)
4. 宮原禎次(明治32年~昭和51年):ヴァリエーション―「雀々」を主題とせる(大正11年)*
5. 鈴木次男(明治34年~平成3年):蝶々蝶々を主題とする五つのバリエーション(昭和11年刊)*
6. 林 良夫(明治39年~平成6年):故郷の癈家に依る變奏曲(昭和13年刊)*
7. 岡本敏明(明治40年~昭和52年):ローレライ変奏曲(昭和14年刊)*
8. 小山清茂(大正3年~平成21年):雁雁わたれ変奏曲(昭和44年)
9. 大中 恩(大正13年~):こどものうた「おなかのへるうた」による変奏曲(昭和55年頃)
~ボーナス・トラック~
10. エルンスト・プッチェル:荒城の月變奏曲Op.52(昭和4年刊)
秦はるひ(ピアノ)
録音:2013年5月16日・17日、神奈川県二宮町生涯学習センター、ラディアンホール
*印:世界初録音
MITTENWALD【国内盤】
「荒城の月」「月」「蝶々」「故郷の廃家」「ローレライ」など、誰もが一度は耳にしたことのある旋律を主題に、日本人作曲家たちがさまざまな変奏を施した作品を集めた、たいへんユニークなアルバムです。収録作品は明治期の唱歌から昭和後期の「おなかのへるうた」まで、実に長い時代にわたっています。国立国会図書館にも、本CDが伊澤修二から大中恩までの日本人作曲家によるピアノ変奏曲を集めた作品集として登録されています。ここで面白いのは、同じような「変奏曲」という形式を使いながら、作曲家によって音楽の姿が大きく異なることです。親しみやすい旋律をそのまま歌わせるものもあれば、リズムや和声を大胆に変化させ、原曲から離れた技巧的な音楽へ発展させるものもあります。つまり、主題となった「歌」を知っているからこそ、その旋律がどのように姿を変えていくのかを楽しめるわけです。なかでも信時潔の「小学唱歌『月』の主題による10の変奏曲」は、「でたでた月が」で始まる唱歌「月」をもとにした作品。もともとの素朴な旋律を、調性や拍子、リズムを変えながら展開していくことで、同じ旋律からさまざまな表情が生まれていきます。また、瀧廉太郎の「荒城の月」は、日本の洋楽受容史を考えるうえでも象徴的な旋律で、平井康三郎だけでなく山田耕筰やエルンスト・プッチェルなど、異なる時代・国の作曲家も変奏曲の題材にしています。今回のアルバムでは平井康三郎の作品に加えて、ボーナス・トラックとしてプッチェルの変奏曲まで収録されているため、ひとつの旋律が国境を越えてどのように受け止められたのかという興味も湧いてきます。さらに、宮原禎次「雀々」、鈴木次男「蝶々蝶々」、林良夫「故郷の廃家」、岡本敏明「ローレライ」、小山清茂「雁雁わたれ」など、現在ではほとんど聴く機会のない作品が並ぶことも、このCDならではの魅力です。そのうち5作品には世界初録音の印が付されており、日本のピアノ音楽を発掘する資料としても興味深い内容になっています。
演奏する秦はるひは、こうした作品を単なる「懐かしい唱歌の変奏」としてではなく、それぞれ独立したピアノ作品として丁寧に弾き分けています。よく知っている旋律と、初めて耳にする変奏曲。その両方を一緒に楽しめるところが、このアルバムの大きな面白さでしょう。未開封新品です。
日本の洋楽受容期から今日までに数多く作曲されたピアノ曲の中から、多くの人の心に残り、懐かしさを感じる「歌」を主題とした變奏曲をまとめてみようと思ったのは5年ほど前のことになる。(中略)前衛的な作品はなく、古典的な作曲技法による変奏曲集ではあるが、それぞれの作曲家の個性と、彼らが生きた時代背景が感じとれることは実に興味深い。耳に懐かしい曲を主題とした変奏曲集であり、日本のピアノ曲に初めて接する方にも、楽しく聴いていただけるアルバムになっていれば大変にうれしく思う。(齊藤保夫、プロデューサー・ノートより抜粋)