プレヴィン【ヴォーン・ウィリアムズの交響曲】
交響曲第1番は、詩人ホイットマンの『草の葉』をテキストにし、声楽付きの勇壮な音楽で開始される大作で、正式なタイトルは『海の交響曲』。
続く交響曲第2番は、大都市ロンドンの印象を描き、作曲者自ら最も気に入っていたという描写的な作品で、正式なタイトルは『ロンドン交響曲』。
交響曲第3番は、田園風景の印象と瞑想を美しく音楽化した作品で、正式なタイトルは『田園交響曲』。
次の第4番から正式にナンバリングされるようになり、もともと映画音楽だった第7番を除いて、標題が使われることが無くなりました。
この交響曲第4番は、第2次大戦直前のヨーロッパの不穏なムードを反映した緊迫感みなぎる作品であり、ドラマティックな進行がとても刺激的。加えて激しい終わり方が、全9曲中、実に7曲が弱音で終わるというヴォーン=ウィリアムズの交響曲の中では独特の存在感を主張しています。
続く交響曲第5番は、激しい第4番のあとということもあってか、戦時の作品とはとても思えない、あるいはそれゆえにか、穏やかで安らかな世界を追求した内面的な音楽です。
交響曲第6番は、戦中から戦後にかけて書かれ、第4番の世界の再現・発展形ともとれる過激で凶暴な迫力に満ちた音楽が強烈な傑作。テナー・サックスが醸し出す退廃的な雰囲気、連打されるバスドラの迫力は圧巻です。
交響曲第7番は、描写的な映画音楽『南極のスコット』を再構築した作品で、正式なタイトルは『南極交響曲』。ヴォーン=ウィリアムズ版『アルプス交響曲』ともいうべきパノラマ的な面白さが聴きものとなっています。多数の打楽器や、オルガン、女声合唱、ソプラノ独唱などの効果的な使用も印象的です。
続く交響曲第8番は、二管編成のオーケストラに5人の打楽器奏者を要する編成により、主題のない変奏や、行進曲風スケルツォ、カヴァティーナ、トッカータなどがあらわれる凝った作品。
最後の交響曲第9番は、作曲者の死の直前、80代なかばの創作ですが、そこで支配的な詠嘆や諦観といったムードは、生涯最後の作品にふさわしいものなのかもしれません。テナー&アルト・サックスの使用もユニークです。