『APHORISMS』ヤッシャ・ネムツォフ(ピアノ)
ライナーノーツ著者:Jascha Nemtsov
異なる時代に生まれた3人の作曲家のピアノ小品集を組み合わせたアルバム。短い曲の中に凝縮された感情や、曲同士の結び付きが聴きどころです。解説は、各作品の成立事情に加え、ユダヤ音楽との関係、死や喪失の影、連作としての構成を紹介しています。
・ショスタコーヴィチ《10の格言》作品13
1927年、20歳の時に作曲。若い作曲家の内面を映す作品で、繊細さや苦悩が、機知、皮肉、自己風刺と交錯します。夜想曲、悲歌、葬送行進曲、死の舞踏などには死のイメージが現れ、解説では当時の病気と死への恐怖との関連も示唆されています。一方、セレナードには親密さとユーモアが共存し、練習曲では自身のピアニストとしての野心を風刺しています。様式は幅広く、簡潔な書法や無調的な響きも登場。各曲は旋律、リズム、和声によって関連し、一つの連作を形づくっています。後年のソ連での批判が、この作品の長い不遇に影響した可能性にも触れています。
・ヴァインベルク《子供のためのノート》第1~3集
1944~45年に作曲され、幼い娘に献呈された作品。題名から想像される明るい教育用小品とは異なり、深刻な表情と高い演奏上の要求を備えています。遊びや鳥の声を思わせる場面も、突然、不穏な響きや激しい展開に変わり、葬列を連想させる曲もあります。ユダヤ的な旋律やリズムは、民族色の提示にとどまらず、悲劇を示す要素として扱われています。解説者は、戦争で成長の機会を奪われた多くのユダヤ人の子供たちとの関係を読み取っています。
・サラ・ネムツォフ《20のスケッチ》
2005年の作品。イスラエル旅行の印象を背景に、終曲での《黄金のエルサレム》への言及、クレズマーのリズム、シナゴーグの歌唱を思わせる装飾などを取り入れています。音楽素材にはユダヤ音楽の旋法も用いられています。個々の曲は断片的でも、聴き進めると相互の関係が浮かび上がる構成。完成した絵を提示するより、複数の部分像から聴き手の想像を促します。シューマンの小品集の美学を受け継ぎつつ、現代の響きによって感情を伝えようとする姿勢が紹介されています。
※本説明は、Jascha Nemtsov執筆のライナーノーツを出品者が読み、ポイントを独自の言葉で要約したものです。