寺院というものは歴史上、常に何かの力と結びついてきた。むろん一般的には、寺院は人々を救済するための信仰の場である。しかし不幸にして、この精神世界は、いつの時代も権力や財力といった力に支配されてきた観がある。けれどもそうした力は、たいていはかなく、虚しい。一時は絢爛たる花を開くように見えるが、落花凋落も早く、また激しい。(中略)京都に名刹と呼ばれる寺院は数多い。本書で言いたかったことは、それらが、たとえ今日は観光で保っているとしても、必ず権威を離れて生きてきたという一点に絞られる。(「おわりに」より)