■譲り切、并死後譲り扣(天保年間・京都大文字町)
【判型】半紙本1冊。縦226粍。
【作者】大文字町・町役人編(*大文字町会所(あるいは町年寄)留帳)。
【年代等】天保4年改、天保14年まで追記。天保以降書。
【備考】分類「法制」。『譲り切、并死後譲り扣』は、江戸後期の京都町奉行所(東西御役所)管轄下にあった大文字町(現在の京都市中京区)において、町名主や町年寄などの町役人が日々の行政・司法実務の雛形を書き留めた実務手引帳(用留)。表紙に書名の「譲り切、并死後譲り扣」の9字を記し、その見返しに「天保四巳年改、大文字町」とあって、天保4年(1833)に当時の町役人がそれまでの寛政・文化年間の重要書類を整理してマニュアルとして編纂したものであることが知られる。本文冒頭には、凡例として「東西御役所様、わかりは夫々上に印切也」、「寛政九年以来文化より、おもに書留有之候事」、「前後文言定通り候故、印無之候事(本文中では中略の旨)」を掲げ、京都町奉行所の東町奉行所・西町奉行所のどちらに提出する書式であるかを各頁上部の「東」「西」の印で厳格に使い分けている。続く頁からは具体的な権利移動の文言が並び、「一、当所私所持家屋敷、壱ヶ所/寛政七年卯正月廿四日、倅又七へ/死後譲候状前出し置申候処、今般けが仕、其上風邪引、大変相改候に付、更に譲り直し、死後を不待、譲り渡し改。寛政九年巳卯年十一月、大文字屋又七/改、年寄喜兵衛」と、被相続人の急病(怪我)に伴い「死後譲状」から「生前贈与(即時譲り渡し)」へ緊急に法的手続きを切り替えた実例を筆頭に載せる。天保期の約10年以上にわたり現役で加筆・活用され続けたことが伺える。さらに、最終頁には長年所持してきた家屋敷を他人に完全売却する際の極めて重い法的誓約である「永代売渡し(差支無之候、以上)」の公式フォーマットを収録し、当時の高度な都市自治と緻密なリーガル・システムの実態を今日に伝える大変貴重な肉筆の法制史料である。
★原装・題簽付・状態概ね良好。稀書(全国に所蔵数カ所(国文学研究資料館DB))。