

廃盤
エーリヒ・クライバー指揮
ワーグナー:
楽劇「トリスタンとイゾルデ」ハイライト
2CD
フラグスタート、
スヴァンホルム、
ウルスレアク、ホッター、
ウェーバー、ほか
エーリヒ・クライバー指揮
ブエノスアイレス・テアトロ・コロン合唱団&管弦楽団
1948年
伊 MELODRAMレーベル
スイス・プレス盤
以下、『エーリヒ・クライバー 信念の指揮者、その生涯』からの抜粋になります。ご参照ください。
~息子のC.クライバーと違って、レパートリーの広さも売りだったことが、残された録音の記録でもうかがえるのだが、なかでも『トリスタンとイゾルデ』は得意だったとか言う話を見たことがある。同じく天才で、優れた『トリスタンとイゾルデ』の指揮者であった息子が無視できない『トリスタンとイゾルデ』と言えば、一応格好は付く話である。父の偉大さを一番よく知っていたのは、息子だったということだろうか。ベートーヴェンの第七交響曲第二楽章の結末の処理の踏襲も、複雑な審美上の敬愛の念があってのことだろう。
そういう訳か、親子の音楽の特質は随分似るのだが、完全に一致するというものではなく、響きに強くこだわらず、速めのテンポと攻め入る性質という三大特質が重なるに留まる。C.クライバーの旋律は、特に速くて強く演奏される場面では、楽譜の音符を追っていると語るよりも、異様な生命力がほとばしっている様子と形容した方が、はるかに正確な言葉による描写だと言えるものであるが、一方で、E.クライバーは、かみ剃りのような溌剌とした音楽さばきが、速さという質感の上に乗る。第一幕への前奏曲を見てもわかるが、息子がライトモチーフに宿る生命力の横溢を手なずけようと音楽とオーケストラに全神経を集中して憔悴しかけているのに対し、親父は監督者気質な捌きであり、音楽は完全に興に乗ってまるで飛ぶようだが、指揮者は依然冷静で沈着である。激情も甘美の一つの味にすぎない、ワーグナーはその入れ替えを冷静な頭で構築した男だ、E.クライバーはそう言っているかのようだ。こういう対称が出る場面はここだけではない。吉田秀和氏なら、E.クライバーのこの指揮の様を、必ずしも正しいイメージを読者に与えはしないが、「知的な」と言っていたかもしれない。この捌き方から生まれる音楽の溌剌多彩な様は、ときには新しさを感じるほどだ。
ワーグナー:
楽劇「トリスタンとイゾルデ」ハイライト
キルステン・フラグスタート (ソプラノ)
セット・スヴァンホルム (テノール)
ルートヴィヒ・ウェーバー (バス)
ヴィオリカ・ウルスレアク (ソプラノ)
ハンス・ホッター (バス・バリトン)
アンジェロ・マッティエロ (バリトン)
ブエノス・アイレス・テアトロ・コロン管弦楽団&合唱団
エーリヒ・クライバー (指揮)
1948年8月20日
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