・背後から強い光でレンズ内を照らすと微細な点状の劣化部分がいくつか見られます。
・前玉、後玉とも表面のコーティングはきれいな状態です。
・外観は小さな傷や塗装のはげが見られますが経過年数の割にきれいな部類だと思います。詳細は前述のリンク先にある高解像度画像でご確認ください。
【可動部の状態】
・ヘリコイドにラップ研磨処理を行ったため、ヘリコイドの操作感に影響を与えるものや、新しいグリスを汚す異物はきれいに取り除かれています。距離環は全周にわたって大変スムーズに回転し、逆転時の遊びもなくピント合わせが正確にできます。
・絞り羽根に油分の付着はなくきれいです。
・絞り羽根の動作はCanon F-1ボディに取り付けて確認しましたが,シャッターに連動して迅速に開閉しました。
・絞り環はクリック感が良く軽い力でスムーズに回転します。
・距離環と絞り環の操作感は多くの方に良好だと感じていただける状態に整備できていると思います。
【このレンズの特徴等】
・絞り開放時には被写体の前後を大きくぼかした写真が撮影できます。
・最短撮影距離は0.6mです。
・FD 55mm F1.2 S.S.C.の重量が実測505gに対し、非S.S.C.の出品個体は重量が実測550gあり、重量感があります。重量の差が生じている一番の原因はヘリコイド鏡筒の1つに真鍮製のものを使用していることです。
【分解整備の内容】
※このレンズは分解の形跡がありました。ヘリコイドに使用されていたグリスは製造当時のものと同じ白色のものでしたが、私が確認したものとは色調が異なり油分の分離が進んでいました。おそらく純正のものではないと思います。Canonは長期間の使用に伴うグリスによる油じみやレンズのくもりの防止に力を入れていたということと、CANONの整備マニュアルでも白色の指定グリスを使用する指示がされているという情報が見つかります。
・絞り羽根前後のレンズ面に薄く油分による汚れがありましたので除去しました。
・フォーカスリングのヘリコイドに使用されていた古いグリスをベンジンとブラシで洗浄しました。しかし、溝の中には、わずかではありますが汚れのこびりつきや微細な異物がありましたので、ヘリコイドの溝の中をラップ研磨できれいな状態にしました。その後,当初使用されていたグリスと同様に油分のにじみ出しが起きにく成分のヘリコイドグリスを塗布しました。
・ラップ研磨を行うと直接接触できないヘリコイドの谷底の部分やμmサイズの条痕の中まで微細な砥粒が行きわたることで研磨ができます。通常行われているゴシゴシこするような研磨とは原理が異なります。
・個々の部品は分解時に洗剤による洗浄を行い汚れや不要な古い油分を取り除きました。その後、超音波洗浄機で洗浄しました。
[無限遠の調整について]
・最近はフィルムカメラの需要が増えていることがニュースでも取り上げられていました。私の無限遠調整および動作確認はすべてそのレンズを使用する前提で製造されたフィルムカメラに装着して正確に行っています。出品中のレンズはCanon F-1ボディに取り付けて距離環を無限遠側いっぱいに回した位置で星や月面にピッタリとピントが合うように調整しています。マウントアダプターを介してミラーレス一眼で使用した場合は多くの場合わずかにオーバーインフ(無限遠マークのわずかに手前で無限遠にピントが合う状態)になり無限遠にはピントが合わせることができるはずです。
・無限遠調整時の被写体は(1)明るい恒星、(2)恒星と同じ結果になるように調整した無限遠コリメーター、(3)約200m先にある鉄塔のいずれかで調整時に利用可能なもので行っています。無限遠コリメーターは口径10.2cm焦点距離1200mmのアポクロマート天体望遠鏡(PENTAX 100ED)の接眼部にピンホールと光源を取り付けたものです。また、調整時にはカメラボディーに自作の高倍率マグニファイアを装着して確認しています。(1)~(3)のいずれで調整しても全く同じ結果になることを確認しています。
※ミラーレス一眼にマウントアダプターを介して取り付けた場合は、そのマウントアダプターの設計や工作精度によって無限遠位置が異なります。ほとんどの場合はオーバーインフになることを確認しています。これは、マウントアダプターを使用した際に確実に無限遠が出せるように余裕を持たせてた設計にしているためです。オーバーインフ気味になるマウントアダプターに取り付けたときに無限遠がぴったり合っていた場合は、そのレンズを本来のフィルムカメラに取り付けた時にはほとんどの場合無限遠にピントが合わないことになります。カメラレンズの無限遠調整を行う場合は製造時と同じ位置に近づける目的で前述のようにフィルムカメラを基準とすることが最善です。
【F1.2標準レンズ5種の星像試験結果比較】
以下の5種類のレンズで白鳥座付近の星空を撮影した実写結果を参照できるようにしてみました。
撮影データは共通で絞りF4、露出15秒、ISO3200です。いずれも赤道儀で日周運動を自動追尾しながら撮影しています。
1 CANON FD 50mm F1.2
2 CANON FD 50mm F1.2 S.S.C.
3 NIKKOR 50mm F1.2
4 NIKKOR 55mm F1.2
5 ROKKOR 58mm F1.2