







*商品について
ご覧頂き有難うございます。突然ですが、現在日本で最も使われている学習英和辞典『ジーニアス英和辞典』(大修館書店)をご存知でしょうか。全国の高校生・大学生・英語学習者でその名を知らない者はいないと言っても過言ではないこの大ベストセラー辞典ですが、今回出品するのは、その『ジーニアス』の初代編集主幹を務め、日本の英語学・語法研究の頂点に君臨した巨匠・小西友七(こにし ともしち、19172006)先生が、まだ神戸市外国語大学の教授を務めていた昭和30〜40年代に、日本の英語教育の惨状に警鐘を鳴らし、大学受験生に向けて執筆した幻の英文解釈参考書『英文解釈の着眼と工夫』(美誠社)になります。
現在の大学入試は、センター試験(共通テスト)が導入され始めた1990年代以降、「数千語に及ぶ超長文を、制限時間内にいかに速く読み飛ばし、必要な情報を拾い上げるか」という情報処理能力テストに変わり、内容は哲学や文学ではなく、「環境問題」「心理学の実験」「AIの進化」といった論理的で実用的な論説文が主流になりました。その結果、「パラグラフリーディング」や「情報構造」といった、文章全体のマクロな論理展開を速読する読解法(今井宏や西きょうじなど)が流行り出し、それにつれて参考書も「ディスコースマーカーに丸をつけろ」「段落の最初の文だけ読めば全体がわかる」といった、マクロな視点での速読テクニックが持て囃されるようになりました。
しかし、それ以前の時代の大学入試で出題されたのは、シェイクスピア、サマセット・モーム、バートランド・ラッセルなどの難解な哲学書や文学作品からの抜粋であり、「いかに複雑に入り組んだ英文の骨格(構文)を正確に見抜き、論理の糸を解きほぐして美しい日本語へと変換するか」という、さながら高度なパズルや暗号解読のような「英文解釈」が絶対的な中心でした。そのため、この時代の格調高い参考書は「題材・解説の教養深さ」「構文を論理解析する深度」という点において、現代の参考書とは比較にならないほど深いのです。
本書もその例に漏れず、あの時代の格調高く・ミクロな構文解析を極めた参考書の一つです。アインシュタインの科学論やジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984年』など、現代の最難関国立大の入試において今でも受験生を苦しめるような高尚で最高難度の英文を題材とし、第1章で「文の要素(5形式)」を定義し、第2章「主語の発見」、第3章「補語の発見」、第4章「目的語の発見」と展開していきます。「SVOCの骨格を見抜き、修飾語と被修飾語の関係を論理的にパズルとして解く」というまさに構文主義のアプローチであり、省略、挿入、倒置といった例外構造まで、短い難解な英文を虫眼鏡で徹底的に解剖し、初見の難解な英文に出会った際に「まずどこに目をつけ(着眼)、どうやって構造を見抜くか(工夫)」という普遍的な思考プロセスを体系化しています。
しかし、本書が当時の他の参考書と決定的に一線を画しているのは、後に「英語語法文法学会」の初代会長に就任することとなる小西友七氏の「語法学者としての狂気的なまでの探求心」と、共著者である酒井健三氏の「文学的な深い洞察」が、オーバースペックなまでに色濃く反映されている点にあります。
大学入試(特に早慶などの難関私大)では、「この文法はアリか?ナシか?」「この単語の使い方は正解か?」という語法の例外や特定の前置詞との結びつきを問うマニアックな問題が出題され、予備校のカリスマ講師たちが「今年の〇大の問題は悪問だ!」と論争になることが頻繁に起こります。その際、最終的な決着をつける(裁判官のような)役割を果たすのが、小西氏の語法研究です。
小西先生の凄さは、単なる学者にとどまらない「実例への執念」にあります。「ネイティブスピーカーがどのような感覚でその単語を使っているのか」「どこまでが自然で、どこからが不自然(非文)なのか」の境界線を追い求め、無数の文献(コーパス)から実例カードを作り、数多くのネイティブに直接ヒアリングを行い、それを日本人が理解できる緻密なルールとして明文化しました。「辞書は生き物である」という哲学のもと既存の辞書のコピペ(孫引き)を激しく嫌い、この圧倒的な熱量があったからこそ、氏が担当していた時代のジーニアス(初版〜第3版)は「語法の解説が異常なほど細かい歴代最高峰」として今でも神格化されているのです。
本書は、その小西氏の語法理論と、英米文学専攻で受験教材のノウハウに長けた酒井氏の解説を完璧に融合させるため、「原稿は全部酒井が書き、小西はその意見を述べる(推敲・監修する)」という理想的な協同作業で作られました。その結果、ページの隅にあるコラムや注釈に至るまで、大学院レベルの言語学(小西イズム)と文学的薫陶(酒井イズム)が爆発しています。
例えば、現代では絶滅してしまった「Will」と「Shall」の完全解剖です。現代の英語教育では「Shallは Shall we ~ ? くらいしか使わない」と教えられますが、本書では伝統的な規範文法に則り、人称による「単純未来」と「意志未来」の表を作成し、「You shall... / He shall...(君に…させよう)」という話し手の意志の用法から、「The Emperor shall be...(天皇は国家の象徴である)」に見られる「立法」のshallまでを徹底網羅しています。極めつけは、「I shall never forget your kindness.」という文に対し、「willよりもよく考えた末の決心や深い感情にもとづく決心を示すことが多い」と、単なる暗記を超えた感情のニュアンス(文体論)にまで踏み込んでおり、もはや立派な言語学の専門書の域に達しています。
さらに「QUESTION BOX」や「AN IDLE TALK」といったコラムでは「careという動詞は辞書では自動詞としか説明されていないが、ここでは他動詞ではないか?」という鋭い質問から始まり、「Yes」や「Thank you」を言語学の「Sentence-word(文相当語)」という概念で解説され、さらには「much different from は間違いか?」「doesn't need と need not はまったく同じか?」「牽引(attraction)の現象」「ネクサス目的語」など、現代の世界的言語学者が用いるガチの言語学用語やアカデミックな議論が、高校生向けの参考書に平然と並んでいます。
そして、こうした小西氏の学問への妥協のなさに呼応するように、執筆を主導した酒井氏の「文学的な翻訳の美しさと背景への深い洞察」も際立っており、great skill という単語に対し、「greatをいつも『偉大な』と訳すのはまずい。この場合は『高度の熟練』などでよい」と文脈に応じた洗練された日本語訳を要求し、一橋大学の「作家の心境」を描いた文学的な英文では、bronze-blue を「青銅色」、slid imperceptively を「いつのまにかしらないうちにすぎ」と、まるでプロの翻訳家が商業出版の小説を手がけたような、息を呑むほど美しい日本語訳を提示しています。
また、小泉八雲の英文に登場する We を「Royal "we"(国王が公式に自己を表示する君主の威厳)」と解説し、第二次世界大戦でV2ロケット弾の爆撃が止んだ直後のロンドンを描いた文章では、「現在時制による描写にこの感じ(平和に返った驚きと喜び)がよく表現されている」と、時制という文法事項がいかに文学的な臨場感を生み出すかという表現の効果にまで話が及んでいるのです。
このように、本書のはしがきで「英米文学を専攻する酒井と英語学を専攻する小西との harmonious collaboration(調和のとれた協同作業)」と表現されている通り、ただの文法書ではなく、文学的な深い読解(酒井氏の得意分野)と、隙のない精緻な語法理論(小西氏の得意分野)が完璧に融合した、当時の受験英語最高峰の参考書なのですが、ここヤフオクにお集まりの受験英語参考書マニアの皆さまでも、本書の存在を知ってはいたものの、ずっと入手する機会が訪れなかった、という方も多いのではないでしょうか?
というのも、本書は日本で出版されたほぼ全ての書籍が所蔵されていると云われるあの国立国会図書館にすら所蔵されていないのみならず、提携を結んでいる全国1163館(日本全国の公共図書館のおよそ3分の1)の公共図書館のほか、日本国内の大学図書館と繋がっているCiNii Books、世界中の図書館・博物館・美術館と繋がっているWorldCatで検索してみても、それらのどこにも所蔵されていない「幻の参考書」なのです。
つい6年前にも、ここヤフオクに珍しく登場した際は、およそ4万円弱という値段で落札されたようです。しかも驚くべきことに、その時の個体はなんと「カバー欠品」であり、かつ「図書館の除籍本(蔵書印や貸出カード入れ、管理シール等が貼付された状態)」という、古書コレクターにとっては決して状態が良いとは言えない、いわゆる難ありの品でした。一般的に、カバー無しの除籍本となれば古書としての価値は著しく下落しますが、「そのような状態の個体であっても約4万円を出してでも手に入れたい」と熱狂するマニアが存在すること自体が、本書の異常なまでの希少性と、そこに書かれた内容の歴史的価値を何よりも証明しています。
今回、当方が出品するものは経年劣化は見受けられますが、カバー付きであり、この年代の大学受験参考書にしては珍しく書き込みもございません。勿論、ここまで貴重な参考書ですから、現在、メルカリ・ヤフオク・Yahoo!フリマ・Yahoo!ショッピング・楽天市場・楽天ラクマ・Amazon等において、当方以外に本書を出品している者は一人も居りませんし、Amazonに至っては商品ページすら存在しないため、恐らく現在ネットから本書を入手しようと思えば、ここで購入される以外に方法はありませんし、現実世界においても、全国各地の古書店が急速に潰れ始め、最近ではAIの学習のために海外に古書が流出しているなどというニュースも出てきている昨今、これほどの好条件の個体を入手する機会が訪れるのは絶望的な確率といえるでしょう。
現代の「フランクで分かりやすい」参考書では決して味わうことのできない、容赦のない知性と、論理の刃で英文を切り裂くような昭和の「本格的な英文解釈」の神髄。当方も数々の希少な受験英語参考書を目にして来た自負がありましたが、そんな当方からしても目から鱗な発見が多く、英語学を専攻される大学生・大学院生、英語教員の方、あるいは「あの頃の骨太な受験英語」をもう一度深く味わいたい英語愛好家の方にとって何物にも代えがたい至高の知的体験をもたらしてくれるはずです。
また、最後に余談にはなりますが、当方は現在この他にも昔の大学受験英語参考書の中でも特に希少とされているものを出品している他、これから断捨離の為、この『英文解釈の着眼と工夫』を手始めに、当方が手元に置いておきたかったような、今まで出品していたものよりも更に希少な昔の大学受験参考書(主に数学)を数百〜数千冊程どしどし出品していく予定ですので、気になる方は現在の出品物一覧をご覧いただくか、フォローするなどして出品をお待ち下さい。
商品名:英文解釈の着眼と工夫
著者:小西友七、酒井健三
出版社:美誠社
発行年月日:昭和42年5月1日
版・刷:第12刷
総頁数:392ページ
【目次】
*画像をご覧下さい。
【著者について】
・小西 友七(こにし ともしち、1917-2006)
日本の英語学・語法研究における最高権威であり、現在も圧倒的なシェアを誇る大ベストセラー『ジーニアス英和辞典』(大修館書店)の初代編集主幹を務めた巨星。彼が手掛けた初期の『ジーニアス(初版〜第3版)』は、その語法解説の異常なまでの詳しさから、現在でも英語教員やマニアの間で「歴代最高峰」と神格化されている。のちに「英語語法文法学会」の初代会長にも就任し、日本の大学入試における「正解の基準(ルール)」を根底から築き上げた、まさに受験英語界の創造主とも呼べる存在。神戸外国語大学名誉教授。東京外語英文科・京都大学英文科卒。英語学専攻。
<著書>
・.『ジーニアス英和辞典』(大修館書店 / 初版1988年〜)
・『現代英語語法辞典』(三省堂 / 2006年)
・『英語の語法 — 意味と形』(大修館書店 / 1980年など語法シリーズ)
・「英文法シリーズ」(研究社)など。
・酒井 健三(さかい けんぞう)
語学の名門出版社・美誠社において、昭和の大学受験英語界を裏から支えた実力派の英語教育者。英米文学を専攻し、極めて高度な読解力と文学的な翻訳センス、そして受験生を合格へ導く実践的なノウハウを併せ持つ「凄腕の教材職人」。美誠社から本書の他にも、『完成への英文解釈』(昭和43年)や『設問による 英語長文の徹底演習』(昭和51年)など、当時の上位層の受験生を唸らせた数々のハイレベルな名著を単著で世に送り出している。京都大学助教授。大阪外語・京都大学英文科卒。現代アメリカ文学専攻。
<著書>
・『完成への英文解釈』(美誠社 / 昭和43年・1968年)
・『設問による 英語長文の徹底演習』(美誠社 / 昭和51年・1976年)
・「スタインベック、フォークナーに関する論文」
・「現代英米作家傑作集」(美誠社)
・「現代英米作家短篇集」(美社)など。
*状態について
書き込み無し。カバーにヤケ・シミ・擦れ傷・破れ(小)等の経年劣化有り。本体天・小口・地にヤケ・シミ有り。
*備考
①.配送方法の変更は承っておりますが、入札後ですと、変更不可能な配送方法も出てくる為、出来るだけ入札前にご連絡いただけますと幸いです(もし、入札されてしまった場合でも、落札者都合のキャンセルにご承諾頂ければ再出品致しますので、再度ご購入いただくことは可能です)。
②.こちらの商品は特にご指定がない場合、「お手軽配送(日本郵便)ゆうパケットポストmini」(¥180)で配送する予定です。