https://amzn.asia/d/0icvWwge

中古です。
レンタル落ちではありません。再生確認済みです。
プラスチックケースには経年のスレがあり、インナーの端にはごくわずかのケース爪咬み跡があります。
盤面はきれいです。
------------------

ライナーノーツ要約

解説:クリスティアン・ウッツ
クンス・シムの音楽は、自然界や日常生活の音に、明確な目的を定めず注意深く耳を澄ませる姿勢から生まれている。なかでも沈黙は重要であり、普段は見過ごされる小さな音や細部を浮かび上がらせ、身の回りの「事物」に語らせる働きを持つ。
その音楽を聴くためには、
  • 何かが起こるのを辛抱強く待つこと
  • 自分の記憶や期待の働きに意識を向けること
  • 音と音、時間と空間の「あいだ」に関心を持つこと
が求められる。
シムは、こうした考え方を東アジア、とりわけ日本の美学と結びつけている。一方で、単純に自然音を模倣するのではなく、「自然なもの」は高度に人工的な構成によって初めて知覚できる、という逆説的な立場を取る。そのため作品は静かで自然発生的に聞こえながら、実際には非常に緻密に設計されている。
この点でシムの音楽は、ジョン・ケージやモートン・フェルドマン、アメリカ前衛音楽の伝統と近い。しかし、ケージ晩年の《ナンバー・ピース》のような開かれた場の音楽とは異なり、シムの作品では、音の配置、反復、沈黙、時間的進行が精密に組み立てられている。そこでは、
  • 聴くこと
  • 待つこと
  • 記憶すること
  • 忘れること
が互いに衝突し、知覚そのものが揺さぶられる。

《trace, elements (IIa)》

ピアノ連弾のための《trace, elements (IIa)》は、静かに奏される7音から9音の和音と、長い沈黙によって構成される。和音はハーフ・ペダルによって柔らかく共鳴し、似ているようで少しずつ異なる響きが繰り返される。
作品は大きく二つの局面に分かれ、その間には60秒から90秒ほどの沈黙が置かれる。前半で聴いた和音は後半に完全な形では戻らず、似た別の響きとして現れる。そのため聴き手は、以前の音を思い出したように感じながらも、それが本当に同じだったのか確信できない。
この作品では、時間の進行そのものが記憶の歪みとして扱われている。反復は安心感を与える一方で、微妙な違いによって記憶を欺き、期待を裏切る。

《54 things》

ピアノ独奏のための《54 things》は、54の短い部分から成る。各部分は四つの区画を持ち、音と休止が「3+1」の形にまとめられている。
基本となる二種類の構造が54の部分に不規則に配置され、反復される音と反復されない音、同時に鳴る和音とアルペッジョが交替する。規則は明確に存在するものの、聴感上は一つ一つの音が空間の中に独立して置かれていくように感じられる。
《trace, elements (IIa)》が時間と記憶の変形を扱う作品であるのに対し、《54 things》は、より空間的で「場」のような音楽である。すべての音が、離れながらも互いに結びついているような、無限の記憶空間が形づくられる。
題名は、ジョン・ケージの連作《Ten Thousand Things》を連想させる。「万物」という東洋的な考え方では、重要なものと取るに足りないものを区別せず、あらゆる事物を固有の存在として尊重する。シムの作品でも、一つ一つの音が主役や脇役に分けられることなく、それぞれ独自の価値を持って提示される。
静かな和音、長い沈黙、わずかな差異、反復によって変化する記憶。本盤は、音を聴くだけでなく、音が消えたあとに何を待ち、何を覚え、何を忘れるのかを体験させる作品集である。

※本稿は、クリスティアン・ウッツによるライナーノーツを出品者が読み、その内容のポイントを独自に要約したものです。