Wynton Marsalis Septet(ウィントン・マルサリス・セプテット)のアルバム『Citi Movement (Griot New York)』(1992年録音、国内盤等では『シティ・ムーブメント』として知られる2枚組CD)についての解説です。

1. アルバムの概要
アーティスト: Wynton Marsalis Septet
タイトル: Citi Movement (Griot New York)
録音: 1992年7月27日〜28日(米RCAスタジオA & B)
フォーマット: 2CD
レーベル: Columbia / Sony Music
本作は、現代舞踏家のガース・ファガン(Garth Fagan)が率いるダンスカンパニーのモダン・バレエ公演『Griot New York(グリオット・ニューヨーク)』のためにウィントン・マルサリスが書き下ろした総合的なスコア(楽曲群)を、自身の精鋭セプテットでスタジオ録音した大作です。1991年のブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック(BAM)での初演は、年間を代表する大文化イベントとして絶賛されました。

2. 構成とコンセプト
全編を通して、大都市ニューヨークの多様な表情、歴史、ストリートの躍動感、そしてアフリカ系アメリカ人の歴史的文脈などが音楽的に表現されています。全体は大きく3つのセクションで構成されています。
Cityscape(シティスケープ)
都市の喧騒や活気、通勤風景や様々な人間模様を描き出すアップテンポでモダンなナンバーが配置されています(「Hustle Bustle」「City Beat」など)。
Transatlantic Echoes(トランスアトランティック・エコーズ)
大西洋を越えたアフリカからアメリカへの文化やリズムの継承、ブルースのルーツ、歴史的な共鳴に焦点を当てています。
Some Present Moments of the Future(サム・プレゼント・モメンツ・オブ・ザ・フューチャー)
未来への眼差しや現代の複雑な都市生活を、高度なアレンジとインプロヴィゼーションの応酬で表現しています。ジャズの創始者バディ・ホールドンへのオマージュなども含まれます。

3. パーソネル(演奏メンバー)
当時のウィントン・マルサリスの鉄壁のレギュラー・セプテット(7人編成)を軸に、楽曲やセクションによってメンバーが参加しています。アンサンブルの緻密さと、個々のソリストとしての爆発力が高度に融合しています。
Wynton Marsalis (トランペット)
Wessell Anderson (アルト・サックス、ソプラノ・サックス)
Todd Williams (テナー・サックス、ソプラノ・サックス)
Wycliffe Gordon (トロンボーン)
Eric Reed / Marcus Roberts (ピアノ - 曲によって交代)
Reginald Veal (ベース) - ※アコースティックなウッドベースの温かみのある響きを重視し、ライン録音(ダイレクト)をあえて避けたこだわりがクレジットされています
Herlin Riley (ドラムス)

4. 音楽的価値と評価
当時、ニューオーリンズ・ジャズの伝統回帰を牽引しつつ、モダン・ジャズの語り口を徹底的に突き詰めていたウィントン・マルサリスの「作曲家・編曲家」としての才能が最高潮に達した時期の作品です。
単なるジャズの小品集ではなく、クラシックの構成力、ニューオーリンズの古き良きルーツ、スウィング、バップ、そして現代的なフリーの要素やアヴァンギャルドなアプローチまでが極めて高いレベルで統合されています。現代ジャズの枠組みを拡張し、都市のドキュメントとして音で描き出した、90年代ジャズ史におけるマイルストーン的傑作の一つです。