① 昭和25年9月中旬の日付のある拓本集で、浪花勇次郎『 阿波犬伏 旧釈迦堂阯経塚出土瓦経 搨拓集 』です。和綴じ本。両表紙とも13丁。大判和紙を2つ折りにして、その上に採択した拓本現物です。表題・刊記とも、浪花氏による見事な肉筆墨書です。最初の拓本に「 天仁二年七月五日 」(1109)の刻銘があります。出土地は「 板野犬伏 蔵佐谷 瓦経塚 」として、徳島県史跡に指定されています。浪花氏は、藤原時代の瓦経出土伝説の残る現地を再々調査し、天仁二年銘の瓦経を発見し、伝説の正しさを証明しました。阿波国出土の瓦経としては、最古のものです。②の「自序」で「(前略)昭和二十六年瓦経拓本集出版の話が、憲法記念館にてまとまり、恩師石田博士、知友宮田蘭堂両氏の序文もいただき乍ら、種々の事情の許に遂に出版に至らず、当時知人よりの申し出で実拓集として十五冊手拓刊行のやむなきにいたった。(後略)」とあります。しかしながら、文中の「 憲法記念館 」は、昭和24年5月3日に開館しましたが、翌25年3月31日に焼失していますので、「 昭和二十六年云々 」の記述は、昭和24年か25年の誤記ではないでしょうか。とすれば、①の昭和25年9月刊行と符合します。①の手作り感あふれる体裁や刊行時期から、この「 十五部手拓刊行 」の内の一部が 出品の拓本集と判断しています。  ② 昭和48年7月1日の日付のある拓本集で、浪花勇次郎 『 阿州 犬伏 旧釈迦堂趾出土 瓦経拓 』です。初版。和綴じ本。原題箋。非売品。題字 田中塊堂。序文 石田茂作 宮田豊正。徳島県出版文化協会刊。本文58ページ。拓本現物2枚がはさまれています(写真参照)。本文の拓本は印刷です。  浪花勇次郎氏は、明治33年 徳島市 寺島町生まれ。鉄道職員として勤務する傍ら、郷土史の研究に情熱を傾けられました。特に古瓦の調査収集研究で、大きな成果を上げた方です。②の刊記に、昭和25年から同31年まで、徳島県文化財保護委員、現在は徳島市文化財保護委員、徳島市中前川町5丁目在住とあります。  詳しい内容は写真欄をご覧願います。  いずれも両表紙と背に経年の変色・薄い汚れ・②に薄い小シミ・①に折れと折れシワまた小虫食いがあります。①の本文中の多くの丁の左端に小欠損があります。①は真ん中ヨコで2つ折りになっています。いずれも本文中の保存状態は良好です。  74年前と51年前の拓本集ということで、ご理解願います。  サイズは①がタテ33.5cm×ヨコ24.6cm×厚さ0.3cm、②が25.8cm×18.1cm×0.5cm。  レターパックプラス520円でお送りします。  ★保存状態の記述は、あくまで出品者の主観的な評価ですので、保存状態にきびしい方は、入札をご遠慮願います。